糖尿病神経障害は、糖尿病患者さまに最も多くみられる合併症です。進行すると感覚が麻痺し、痛みや異変を感じなくなるため手当が遅れ、足の潰瘍や壊疽に至ることがあります。さらに重症化すると足を切断しなくてはいけない場合もあるため、日頃から十分に注意する必要があります。

● 糖尿病が進行すると、なぜ神経障害が起きるのでしょうか?

血糖の高い状態が続くと、動脈や静脈をつなぐ細い血管(毛細血管)がダメージを受け、体内に酸素や栄養が運ばれなくなります。
また、ブドウ糖は通常、その一部が細胞で「ソルビトール」に変化し果糖に変わって代謝されますが、アルドース還元酵素(ブドウ糖をソルビトールに変える酵素)がソルビトールを大量に作り出すため、細胞の中にソルビトールが蓄積する「代謝異常」が生じます。その結果、血管や神経などに障害が起こります。

【末梢神経の血管障害と代謝障害】

慢性的な高血糖によって末梢神経の代謝障害と血流障害が起きます

【健康な人と糖尿病神経障害が進行した人の神経の断面図(イメージ)】

健康な人と糖尿病神経障害が進行した人の神経の断面図
神経障害が進むと神経線維が細くなり、壊れて数も少なくなります

● 神経障害のなかでも高頻度におこる「多発神経障害」

糖尿病神経障害には、両足の感覚や運動障害と自律神経障害の症状を示す「多発神経障害」があります。多発神経障害は両足先や足底部の知覚障害から発症し、進行すると両手にも症状が現れてきます。代表的な症状としては「しびれ」「こむらがえり」「チクチク、ピリピリする」などがありますが、これらは血糖コントロールを良好に保つことで改善傾向に向かいます。
※ 急速に血糖値を改善させると一次的に症状が強く出る(悪化する)ことがあります。

進行すると知覚神経が麻痺し、こたつや湯たんぽなどで低温やけどをしても痛みを感じず、足潰瘍や足壊疽の原因となるため注意が必要です。

【糖尿病神経障害の分類と主な症状】

糖尿病神経障害の分類と主な症状

● 糖尿病神経障害を調べる検査

両足の感覚障害または両側アキレス腱反射、両足の振動覚および圧触覚のうち複数異常がある場合は、多発神経障害が疑われます。そのほかに、筋電計を用いて運動神経伝導速度(MCV)と感覚神経伝導速度(SCV)を測定し、神経障害の有無や進行具合を調べる「神経伝導速度検査(NCV)」があります。 当院では、再現性と客観的な指標を得るためにNCV検査を行なっています。異常所見があり、神経症状や徴候がみられる場合は診断基準を満たすことになります。

【神経伝導速度検査の様子】

神経伝導速度検査では手足の末梢神経に電気刺激を与え、刺激が筋肉に伝わる速度を調べます。
神経伝導速度検査

● 糖尿病神経障害の発症や進行を防ぐためには

糖尿病神経障害の発症や進展につながる誘因として、①血糖コントロール不良(HbA1c7.0%未満の維持)、②糖尿病の罹病期間、③高血圧、④脂質異常(コレステロール・中性脂肪)、⑤喫煙、⑥飲酒 などがあります。治療では、低血糖に配慮して個々の状態に合わせた適切な血糖コントロール( HbA1c7.0%未満 )を行い、禁酒、禁煙、生活習慣の改善のために無理のない実践可能な目標設定が重要となります。

【神経障害・血流障害が原因で起こる足病変の進展】

神経障害・血流障害が原因で起こる足病変の進展

【足の病変が起こりやすい主な場所】

足の病変が起こりやすい主な場所

神経障害により足の感覚が鈍くなると、靴ずれや火傷、切り傷などの足の異常に気づかず、重度の足病変(潰瘍・壊疽)を発症する可能性があります。足を清潔に保ち、日頃から異変がないかよく観察することが大切です。靴は自分にあったものを選び、タコやウオノメを削ったり自己流で治療しないようにしましょう。怪我や異変があれば、早めに医療機関を受診してください。

掲載日:2019年8月29日