暑い季節、水分補給のためにペットボトル飲料を常飲するという方が多くいらっしゃいます。なかには、「運動時は汗と同時に身体に必要な成分も失われると聞いたので、スポーツドリンクを1日に1リットル飲んでいます。」という方もいます。最近ではカロリーオフのフレーバーウォーターが流行っているようで、様々な種類のものを見かけます。しかし、含まれる糖分が100mlあたり0.5g未満であれば「糖質ゼロ」と表示ができるため、無色透明の清涼飲料水でもお水やお茶代わりに多飲すると、糖質を過剰に摂取することになります。糖質の過剰摂取は、高血糖や糖尿病の急性合併症「ペットボトル症候群(ソフトドリンクケトーシス)」の発症リスクにつながるため注意が必要です。

食後血糖値の上昇にもっとも影響する「糖質」

清涼飲料水に含まれる糖質は消化吸収しやすく、体内に入ると速やかに血糖値をあげます。また、糖質の量は多いほど血糖値が高値になります。とくに冷たい飲み物は甘さを感じにくいため大量の砂糖が使われており、気づかないうちに大量の糖質を摂取している場合があります。例えば、3gの砂糖を含むスティックシュガー1本を基準にすると、コカ・コーラでは約19本分、ポカリスエットでは約10本分もの砂糖を含んでいます。普段飲んでいる清涼飲料水にどのくらいの糖質が含まれるのか、栄養成分表示を確認してみましょう。

【 清涼飲料水の砂糖含有量の比較 】

清涼飲料水の砂糖量
ペットボトル1本分のコカ・コーラでは約19本、ポカリスエットでは約10本、R-1ヨーグルトドリンクは低糖タイプでも約3本分のスティックシュガー相当の砂糖が入っています。

【 炭水化物(糖質)、たんぱく質、脂質が血糖に変わる速度 】

3大栄養素別の血糖上昇への影響
炭水化物とは、体内に吸収されてエネルギー源になる「糖質」と、消化吸収されずエネルギーにならない「食物繊維」とに分けられます。糖質はすぐに血糖値を上昇させ、食後血糖値の上昇の9割に影響します。

ペットボトル症候群を発症し、意識障害や昏睡に至る場合も

清涼飲料水の多飲が習慣となって高血糖状態が続くと、喉の渇き、多尿、脱水などを起こし、さらに糖質を含んだ飲料を摂取する・・といった悪循環に陥ります。やがてインスリンの分泌が自力では挽回困難な状態になり、「ケトン体」という毒性を持った代謝成分が体内に蓄積し、全身の倦怠感や嘔吐といった症状が現れます。悪化すると、意識障害や昏睡に至ることがあります。

【 ペットボトル症候群を起こすメカニズム 】

ペットボトル症候群を起こすメカニズム

早急な治療と予防が必要

昏睡あるいは、それに近い状態に陥った場合、一刻も早く生理食塩水を中心とした輸液によって水分とナトリウムを補充する必要があります。そのほかには電解質の補正、適切なインスリンの投与によって高血糖とアシドーシスを是正することが重要です。

ペットボトル症候群は、自覚症状が出る頃には極度の高血糖に至っているケースが少なくありません。
予防には、日頃から糖質を含まないミネラルウォーターやお茶で水分を補給する習慣をつけることが大切です。

気になる症状があったら、早めに受診するようにしてください。

水の代わりにコーラを常飲
毎日の習慣を変え、劇的に改善した血糖コントロールの例

「先生、最近どうしても血糖値が下がらないんです。」

ある日の診察で、Aさんが悩んだ様子で言いました。Aさんは、都内に勤務されている40代の2型糖尿病患者さまです。当院を受診された際はBMIが28.7と肥満傾向で、空腹時血糖は322mg/dL、HbA1c 10.1%、総コレステロール250mg/dL、中性脂肪 436mg/dLでした。管理栄養士による栄養指導を実施し、食生活の改善と運動療法を中心にインスリン療法を行いました。その後は血糖コントロールが良好となっていたため、現在はビグアナイド剤内服を行っています。減量に成功したAさんは週2回ジムに通うなど、治療に前向きに取り組んでいるおかげで、前回の検査結果はHbA1c 6.2%と良好な血糖コントロールを維持していました。

「今回、血糖値が412mg/dL、HbA1cが8.3%と随分高いですね。前回の受診から少し間が空いてしまいましたが、どうかされましたか?」
「はい、急な出張でアメリカに1ヶ月半行っていました。その間は車通勤、外食ばかりで・・。でも体重は2週間で3kg減ったんですよ」
「何か気になる症状はありますか?」
「このところ、喉が渇いて仕方ないんです。そのせいか夜中もトイレに起きてしまってよく眠れていないです。真夏日が続くから、体もだるいし。」
「帰国後も食事は外食中心となっていますか?」
「いえ、帰国後はむしろジムに週3回通って、極力外食は避けています。挽回しようと思いまして」
「そうですか。先ほど喉がかわくとおっしゃっていましたね。いつもは何を飲まれますか?」
「アメリカでコーラをお水代わりに飲むようになって、つい帰ってからも・・。最近はジムの時にはスポーツドリンクも結構飲んじゃっています。」

幸い、Aさんはケトアシドーシスまでは至っていない状態だったため、清涼飲料水を一切やめてお茶やミネラルウォーターを飲むようにお伝えし、内服薬の調整を行ったところ3ヶ月後にはHbA1cが6.4%まで低下しました。

Aさんのように、食事や運動を頑張っていても無意識に糖質を多く含む飲料を常飲し、血糖コントロール不良に陥っている方は少なくありません。その場合、ミネラルウォーターやお茶に変えていただくことで血糖値は改善します。思い当たる方は、ぜひ気をつけてみてください。

※ プライバシーに関わる箇所は一部脚色しております