【甲状腺】甲状腺の腫瘍(おでき)

女性に多い甲状腺のおでき

甲状腺はのどぼとけのすぐ下にあり、甲状腺ホルモンを合成・分泌する臓器です。ここには大小さまざまな「おでき」(医学用語で「腫瘍」)ができますが、見つかったおできが良性か悪性かを診断するのが治療の第一歩となります。おできのうち、良性のものを「腺腫」、悪性のものを「癌」と呼び、ほかに良性として扱われる「腫瘍様病変」があります。

発見されるきっかけとしては、自分でしこりを触れる場合や、健診で指摘される場合のほか、頸動脈エコー検査や胸部CT検査で偶然に見つかることも多くなっています。健診や人間ドックにおいて、触診で「腫瘍(おでき)」が見つかるのは約1.5%ですが、感度の良い超音波検査(エコー検査)を行うと約5人中1人に見つかります。さらに、発見された腫瘍が甲状腺癌と判明する割合は、触診では5~17%、超音波検査では2.6~8.3%といわれています。良性悪性問わず、通常ホルモン値は正常で、女性に多いのが特徴です。

首元の甲状腺の腫瘍

良性の腫瘍

甲状腺の「腫瘍(おでき)」の多くは良性の病変で、最も多いのが腫瘍様病変に分類される「腺腫様甲状腺腫(せんしゅようこうじょうせんしゅ)」です。これは、甲状腺の細胞が刺激を受けて増殖(過形成)して腫瘍化したもので、通常は治療の対象にはなりません。このうち、「のう胞」といって中に液体が貯留するタイプでは、一般的には手術はせず、注射器で内容液を吸引します。また、再発を繰り返す場合には、エタノールを注入して腫瘍を縮小させる方法(「PEIT」)が効果を発揮します。

悪性の腫瘍

甲状腺の悪性腫瘍には、「乳頭癌」「濾胞(ろほう)癌」「髄様(ずいよう)癌」など、いくつかの種類があります。そのうち、9割以上の圧倒的多数を占めるのが「乳頭癌」で、発症頻度が高い年齢は40~60代です。超音波検査で乳頭癌が疑われたら、細い針を刺して中の細胞を吸引し、細胞の形や性質を顕微鏡で調べる「穿刺吸引細胞診(FNAC)」で診断します。乳頭癌は、名前は癌でも性格はおとなしく、予後は極めて良好です。手術で根治することが多いですが、手術をせずに慎重に経過観察をするケースもあります。その場合は、腫瘍の大きさも含めて、きちんと評価することが重要です。

要注意なケース~急速な肥大

甲状腺腫瘍の多くは予後が比較的良好ですが、甲状腺が急速に大きくなった場合は要注意です。進行が早く高齢者に多い「悪性リンパ腫」や「未分化癌」でないかをしっかり検査し、迅速に対応する必要があります。なお、短期間での甲状腺の肥大は、もともと存在するのう胞の中に出血をきたした場合や、「亜急性甲状腺炎」のような炎症を伴う場合にも見られ、痛みを伴いながら増大します。

定期的な検診が大切です

一般に、良性腫瘍が悪性腫瘍に変化することはありません。ただし、サイズが小さいうちは、エコー検査で気づかれない癌はあるかもしれません。甲状腺の腫瘍は、最初の評価がとても大切で、手術のような外科的治療を行わない場合でも専門的な経過観察が必要です。また、高度な検査機器を備えた高次の医療機関と常に連携が取れていることが重要になってまいります。

甲状腺エコー検査

執筆:医療法人みなとみらい 新宿金沢内科クリニック 院長
小野田 教高 先生
掲載日:2021年9月13日