脂質異常症(高脂血症)とは、一定の基準値よりもLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪が高い、または、HDL(善玉)コレステロールが低い状態のことをいいます。本来、コレステロールや中性脂肪は、エネルギーを貯蓄する役割や細胞やホルモンを作る材料となるなど、人間の体にとって必要なものです。しかし脂質異常症だと血液中に余分な脂肪が増え、血液がドロドロの状態になります。この時点では自覚症状がないため、検査で異常を指摘されても放置してしまう方がたくさんいらっしゃいますが、そのままでいると動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などの大きな病気を招くことになります。予防のためには、早くから適切な治療を受けることが重要です。

【脂質異常症と虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の合併率】

脂質異常症と虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)の合併率

コレステロール値が高いと虚血性心疾患を発症しやすいことがわかっています。総コレステロール値が200㎎/dl以上の場合、200㎎/dl未満に比べると虚血性心疾患の合併率は3~5倍となります。

コレステロールや中性脂肪が高くなる原因

脂質異常症の原因は、食生活の乱れや運動不足、お酒の飲み過ぎのほかにも、遺伝的要因によるもの(家族性脂質異常症)や、糖尿病・甲状腺機能低下症など、ほかの病気が原因の場合があります(二次性脂質異常症)。現代人はインスタントラーメンやケーキなどの飽和脂肪酸の多い食事を摂り過ぎるなど、食生活の欧米化により痩せている人、標準体重の人など、体型に関係なくコレステロール値が高い人の割合が増加しています。また、女性は更年期を過ぎると女性ホルモンが減少するため、LDLコレステロールが基準値より高い「高コレステロール血症」を発症しやすくなります。

【日本人と米国人の総コレステロール値】

日本人と米国人の総コレステロール値

日本人の総コレステロール値は増加傾向にあり、1990年には日本人女性はアメリカ人女性より高いコレステロール値を示すようになりました。

脂質異常症の診断基準は
個々の患者さまにより異なります

脂質異常症の一般的な基準値は、空腹時採血でLDLコレステロール・・140ml/dL以上、HDLコレステロール・・40mg/dL未満、中性脂肪(TG)・・150mg/dL以上となります。LDLコレステロールについては、140mg/dL未満であっても120~139mg/dLの間は「境界域」に該当します。これは糖尿病や高血圧など、ほかの危険因子と組み合わさることで冠動脈疾患の発症リスクが高くなるためで、高リスク病態がないかを検討し治療の必要性を考慮します。

いずれも基準となる値は、年齢や性別、喫煙の有無や家族歴、糖尿病や慢性腎臓病(CKD)などの合併症がないかなど、患者さまそれぞれの状態により異なりますので、まずはご自分の目標値を医師に確認しましょう。

【脂質異常症のスクリーニングのための診断基準】

脂質異常スクリーニングのための診断基準

患者さま一人ひとりの状態により、
適切な治療を行うことが重要です

●中性脂肪の治療

主にアルコールと甘いものを制限するなど、まずは食生活の見直しを行っていただきます。
それでも改善しない場合は、お薬による治療を開始します。飲酒習慣がある患者さまは、中性脂肪値が1,000〜1,500mg/dLまで上がる方もいます。実際に日頃の飲酒量を控えていただき、休肝日を設けていただくことで中性脂肪値が下がった患者さまは多くいらっしゃいますので、ご自分にとっての適量を医師に確認して飲酒量を調整しましょう。

●コレステロールが高い場合

生活習慣、体質、加齢による基礎代謝の低下、閉経によるホルモンの減少など様々な要因が考えられます。そのため、年齢や性別、糖尿病などの合併症の有無、狭心症や心筋梗塞などを既往しているかなど、患者さまの状態により治療目標値や適切な治療法を決定します。動脈硬化のリスクがあると判断した場合、頸動脈エコーやABI(血圧脈波)などの検査を行い、からだの状態を調べます。

コレステロール値は下がりすぎても注意が必要です。低栄養状態であったり、バセドウ病など他の病気の影響や、がんの末期など様々な原因が考えられますので、さらに詳しい検査を行う必要があります。

【LDLコレステロールの管理目標値】

LDLコレステロールの管理目標値

動脈硬化性疾患の予防には、LDLコレステロール値を適切に管理することが重要です。管理目標値は、危険因子によって個別に判定します。

脂質異常症の治療の目的は、動脈硬化の進行を予防し
重篤な病気の発症を食い止めることです

脂質異常症の薬物療法は、LDLコレステロールを下げる作用の強いものや、小腸でのコレステロールの吸収を阻害するものなど様々な治療薬があり、副作用や有効性を考慮して選択します。食事や運動などの生活習慣で数値が改善しない場合は、個々の患者さまに適切な薬物療法を行い、動脈硬化の進行を定期的に検査することが重要となります。

また、脂質異常症はいくつかの病気が複雑に絡みあっている事が多く、総合的に治療をしていく事が必要です。

会社の健康診断で指摘を受けたり、少しでも気なることがあれば早期に受診するように心がけ、動脈硬化の進展を抑制し、心筋梗塞や狭心症などの虚血性心疾患のリスクを減らしましょう。

【動脈硬化の進行をみる検査を実施しています】

頸動脈エコー

頸動脈エコーやABI(血圧脈波)は院内で受けていただくことが可能です

監修:
医療法人みなとみらい 藤沢金沢内科クリニック 院長
村井 純子 先生

掲載日:2018年12月27日